🔌 配電・幹線設計 🔥 高頻度の論点

電圧降下は、e=I×Rを「往復」で数えるだけ。

電線はただの導線に見えて、じつは小さな抵抗を持っています。電気が通り道で少しずつ電圧をすり減らす現象——それが電圧降下です。まず「基礎理論の回路と何が違うのか」から片づけて、あとはe=I×Rの1本で解きます。

この論点で問われることは、いつも同じ2つのどちらかです。「通り道での目減り(電圧降下)は何Vか」、または「目減りした結果、届く先(あるいは大もと)は何Vか」。使う式はe=I×R(目減り=電流×電線の抵抗)の1本だけ。ただしその前に、多くの人が最初に引っかかる疑問——「回路図に、なぜいきなり0.1Ωの抵抗が出てくるのか」を片づけておきましょう。過去の試験で繰り返し出題されている高頻度の論点です。

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まず前提から——基礎理論の回路と、なにが違うのか

基礎理論の回路図では、電線は「抵抗ゼロのただの線」という約束で描かれていました。抵抗はいつも「部品」として箱で描かれ、線そのものは電圧を1Vも食いません。この論点では、その約束が変わります。

現実の電線は金属の棒なので、基礎理論で出てくる電線の抵抗の式 R=ρL/A のとおり、長いほど・細いほど抵抗が大きくなります。部屋の中の短い配線なら無視できますが、配電では数十m単位の距離を扱うので、電線自身の抵抗が無視できなくなる。そこで試験の図では、電線の途中に小さな箱(0.1Ωなど)を描いて「この電線は自分も抵抗を持っていますよ」と見せています。あの箱は新しい部品ではなく、電線自身の抵抗を取り出して描いた記号です。

⚡ 基礎理論の回路 —— 電線はただの線(抵抗ゼロの約束) 電源 負荷 目減りゼロ。電源の電圧がそのまま負荷に届く 🔌 配電の回路(この論点)—— 電線そのものが抵抗 電源 0.1Ω 0.1Ω 負荷 0.1Ωの箱=電線自身の抵抗を取り出して描いた記号。届く電圧はそのぶん目減りする
上が基礎理論の世界、下がこの論点の世界。違いは「電線自身が抵抗を持つとして扱うかどうか」だけです。(この記事の図は、金=電線とその抵抗/青=負荷/赤=電流/緑=電圧で塗り分けています)
🔑 この論点は「答えの値」を覚えてはいけない
電圧降下の問題は、年度によって電流・長さ・抵抗の数値が差し替えられます。同じ見た目でも、答えが変わります。だから覚えるのは「e=I×R、往復で数える」という手順だけ。電気は行って帰ってくるので、電線は行きと帰りの2本ぶんを数える——これがこの論点最大の落とし穴です。以下の2問は、手順を見せるための代表例です。

出題パターン①——負荷が2か所に並ぶ問題(区間ごとに電流を数える)

📄 試験ではこう聞かれます
「単相2線式回路で、いちばん先のc-c′間の電圧が100V。手前のb点に5A、先のc点に10Aの負荷。電線1本の抵抗は各区間0.1Ω。電源a-a′間の電圧は」
出典:平成21年度 第二種電気工事士筆記試験 問6/令和元年度上期 第二種電気工事士筆記試験 問6/令和3年度下期 第二種電気工事士筆記試験(午後)問6(3回とも同じ問題。問題文と図を要約)
🗣️ 問題文のほんとうの意味
聞かれているのは「先っぽを100Vにするには、大もとは何Vあればいいか」。通り道での目減りを、末端から順に足し戻していきます。
🤔 つまずきポイント:区間ごとに、流れる電流が違う
道路の交通量と同じです。区間b-cを通るのは、c点へ行く10Aだけ。区間a-bは、b点で降りる5Aとc点へ行く10Aの両方=15Aが通ります。混んでいる区間ほど目減りも大きい——だから区間ごとに「何A通っているか」を数えてから、e=I×Rを区間ごとに当てます。
105V 102V 100V a b c 電源 0.1Ω 0.1Ω 0.1Ω 0.1Ω 15A 10A 負荷 5A 負荷 10A ▼ 目減り 15×0.2=3V ▼ 目減り 10×0.2=2V 先端の100Vから、目減りを足し戻していく(100 → 102 → 105)
金の線と箱=電線とその抵抗、青=負荷。先端のcは100V。区間b-cを流れるのはc点の10Aだけ、区間a-bはb点5A+c点10A=15A。各区間の目減りは「区間電流×往復0.2Ω」。100→102→105と足し上げます。
上の問題の図をもとに、説明用に描き直したもの(一部改変)
片道0.1Ω → 1区間の往復抵抗 = 0.1×2 = 0.2Ω
b点:100 + (10×0.2) = 102V # 区間b-cはc点の10Aだけ
a点:102 + (15×0.2) = 105V # 区間a-bは5+10=15A
105 V
100 +2 +3 = 105V(この回の答え:ニ)。手順=末端から区間電流を積み上げ、往復0.2Ωで降下を足す
ニ105V … 100+2+3 ✓
ハ104V … 区間電流を途中で取り違えた値
ロ103V … 同上(積み上げの数え違い系)
イ102V … b点まで(102V)で計算を止めた/往復を片道だけで計算した値

出題パターン②——電力と長さで与えられる問題(IとRを自分で作る)

📄 試験ではこう聞かれます
「こう長8mの配線で、消費電力2000Wの抵抗負荷に電気を供給する。負荷側の電圧は100V。電線の抵抗は1000mあたり3.2Ω。この配線の電圧降下は」
出典:平成22年度 第二種電気工事士筆記試験 問7/平成30年度下期 第二種電気工事士筆記試験 問6/令和6年度上期 第二種電気工事士学科試験 問6(3回とも同じ問題。問題文を要約)
🗣️ 問題文のほんとうの意味
式は e=I×R のままですが、IもRも直接は書いてありません。「電流は電力÷電圧で、抵抗は長さの割合で、自分で作ってから掛ける」——それがこの型です。ちなみに「こう長」は配線の片道の長さのこと。
こう長 8m(電線は行き+帰りで 8×2=16m) 電源 2000W 100V 電線の抵抗 R=0.0512Ω(往復16mぶん) 行き I=20A 帰りも 20A 電圧降下 e = 20 × 0.0512 ≒ 1V
金色の線=電線そのものが抵抗。電流は「電力÷電圧」で20A。抵抗は「1000mあたり3.2Ω」を往復16mぶんに直して0.0512Ω。あとは e=I×R に入れるだけです。
上の問題の図をもとに、説明用に描き直したもの(一部改変)
電流 I = 電力 ÷ 電圧 = 2000 ÷ 100 = 20A
電線長 = こう長8m × 2(往復)= 16m → R = 3.2 × (16÷1000) = 0.0512Ω
e = I × R = 20 × 0.0512 = 1.024 ≒ 1V
1 V
I=20A、R=0.0512Ω → e≒1V(この回の答え:イ)。IとRを作れば、最後は同じ e=I×R
⚠️ いちばんの落とし穴は「往復2本」を数え忘れること
こう長8mを、そのまま8mで抵抗を出すと降下は半分になります。単相2線式は行きと帰りで電線が2本——長さは8×2=16mで数えます。出題パターン①で「往復0.2Ω」としたのも同じ理由です。2本ぶんを数える、これが電圧降下を通すいちばんの合言葉です。
イ1V … 20×0.0512≒1 ✓
ロ2V … 往復16mでなく32mとした、または係数を取り違えた値
ハ3V … 電流や抵抗の桁を取り違えた値
ニ4V … 同上(過大に見積もった系)

思考実験——この電線で、ブラジルまで電気を送れるか

ここから先は試験に出ませんが、電圧降下が一気に腹落ちする話です。

出題パターン②の問題の電線は、1000mあたり3.2Ωでした。こう長8mなら目減りはたった1V。では極端に長くしたらどうなるでしょう。地球の裏側・ブラジルまでは、ざっと1万8000km。この電線をそのまま敷くと、抵抗は往復で約11万Ω(3.2Ω × 18,000km × 往復2)。100Vの電源につないでも、オームの法則で流せる電流は約0.9mA——豆電球ひとつ点きません。電圧は届く前に、ほぼ全部が途中の電線で使い果たされます。電圧降下は、距離が伸びるほど容赦なく効いてくるのです。

💡 だから電気は「高圧」で送られてくる
では現実の送電はどうしているのか。目減り e=I×R のうち、Rは距離で決まってしまうので、動かせるのはI(電流)です。同じ電力を送るとき P=V×I なので、電圧を100倍にすれば電流は100分の1で済む——目減り(I×R)も100分の1、電線の発熱(I²R)にいたっては1万分の1になります。

だから発電所は何十万ボルトという高圧で送り出し、街に近づくごとに変電所で段階的に下げ、最後は電柱の上の変圧器で100V/200Vにして家に届けます。「わざわざ高圧にして、わざわざ降圧する」のは、電圧降下(と電線の発熱)と戦うための仕組みです。この記事のe=I×Rが、そのまま日本の送電網の設計思想につながっています。
🧠 今日のまとめ
① 基礎理論との違いは「電線そのものが抵抗を持つとして扱う」こと。図にいきなり現れる0.1Ωの箱は、電線自身の抵抗を取り出して描いた記号
② 道具はe=I×Rの1本。単相2線式は往復2本ぶんで長さ・抵抗を数える
③ 負荷が並ぶ型は末端から区間電流を積み上げ、電力で与えられる型はI=電力÷電圧でIを作る
④ 覚えるのは手順だけ。数値は問題ごとに違うので、答えの値そのものを覚える意味はない
繰り返し出題される高頻度論点。「電線も抵抗」「往復2本」の2つを押さえれば、どの年度が出ても対応できます。