三相3線式の電力損失は、たった1つの式しかありません。
電線1線の抵抗 r と、線電流 I。この2つを読んで 3 × I² × r するだけ。
数字は問題ごとに変わります(45W・60W・120W・135W…)が、式はいつもこれ1本。
でもその前に ── 「そもそも、なぜ電線で電力が失われるの?」を腹落ちさせましょう。ここが分かると、全部つながります。
そもそも「電力損失」って何? ―「電線にも抵抗がある」
まず、いちばん大事な土台から。電線は「ただの線」ではなく、わずかに抵抗を持っています。
銅でできた良い電線でも、長くなれば(細ければ)、その抵抗はゼロにはなりません。
そして電流がその抵抗を通ると、抵抗が流れを邪魔した分が"熱"になって逃げます。これが電力損失です。
たとえるなら、長いホースで水を送ると、途中の摩擦で勢いが少し落ちるのと同じ。
電気も、目的地(負荷)に届く前に、"道中の電線"で少しだけ目減りするんです。
💡 だから「負荷の形」は関係ない
損失は
"電線という道"で起きる目減り。目的地(負荷)でその電気を何にどう使おうと、
道中で失われる量は「流れる電流」と「道(電線)の抵抗」だけで決まります。
ここを掴むと、後で出てくる
「デルタ結線でも答えが同じ」が、当たり前に思えてきます。
電線にもわずかな抵抗があり、電流が流れると I²r の熱(=損失)が出ます。
三相3線式は電線が3本。3本それぞれで損失が出るから、合計は 3 × I²r。それだけです。
主役は「電線1線の抵抗 0.15Ω」と「線電流 10A」の2つだけ。右の負荷の中身(箱でもデルタ結線でも)は、損失の計算には使いません。
出典:平成27年度上期 第二種電気工事士筆記試験 問6/令和4年度上期 第二種電気工事士筆記試験(午前)問6/令和5年度上期 第二種電気工事士学科試験(午前)問6 の図をもとに描き直したもの(一部改変)
頭の中はこう動く(3ステップ)
電線1線の抵抗 r と 線電流 I を読む。図に書いてある2つの数字を拾うだけ。負荷の形は見なくてOK。
3 × I² × r を計算。「3」は電線3本ぶん。I は2乗するのを忘れずに。
近い選択肢を選ぶ。たいてい割り切れます(10²×0.15×3=45 など)。
なぜ「3倍」なの? ―電線が3本だから
さっき見たとおり、電線1本ごとに I²r の損失が出ます。三相3線式は、その電線が3本走っている。
だから1本ぶんの I²r を、3本ぶんで 3倍するだけ。これが「3」の正体です。
1本ごとに I²r の損失。三相3線式は3本だから、合わせて 3 I²r。単相2線式なら電線は2本なので 2 I²r です。
3 × 10² × 0.15 = 45 W
線電流10A・電線抵抗0.15Ω → これが電線路の電力損失。
🔥 ここが本番 ―「デルタ結線の図」に騙されるな
同じ論点で、負荷がデルタ結線(Δ)で出ることがあります。三角形に抵抗が3つ並んだ図を見せられると、
つい「デルタ結線だ! √3を掛けるやつだ!」「負荷の抵抗値を求めて…」と身構えてしまう。それが出題者の狙いです。
負荷がデルタ結線でも、電線(赤の手前)を流れる線電流は同じ10A、電線の抵抗も同じ0.15Ω。グレーのデルタ結線部分は損失計算に無関係。
出典:平成28年度下期 第二種電気工事士筆記試験 問8/令和5年度下期 第二種電気工事士学科試験(午後)問6 の図をもとに描き直したもの(一部改変)
⚠️ 惑わされない合言葉:「損失は"電線"の話。負荷は関係ない」
問題が聞いているのは
「電線路(電源→負荷の3本の線)」の損失。
負荷がデルタ結線だろうがスター結線(箱)だろうが、
電線を流れる線電流 I と、電線の抵抗 r が同じなら、損失は完全に同じです。
だから ──
√3を掛けない 負荷の抵抗を求めない。
3 × I² × r、それだけ。
さっきの三相(箱): 3 × 10² × 0.15 = 45W
こんどのデルタ結線 : 3 × 10² × 0.15 = 45W ← 図が違うだけで、答えは全く同じ
⚠️ 方式が変わると「考え方」が変わる ―混同注意
ひとつ注意。「電線の本数ぶん掛ければいい」と単純化はできません。
配電方式によって「電流が実際に流れる電線が何本か」が違うからです。
三相3線式・単相3線式・単相2線式は、それぞれ考え方が異なります。混同しないように。
📌 この記事は「三相3線式」に集中
ここでの主役は
三相3線式(3 I²r)。まずはこれを確実に押さえましょう。
単相2線式・単相3線式は考え方が違うので、別の論点として分けて押さえてください。
そのときの鍵は「電流が流れている線は何本か」です。
🧠 今日のまとめ
① 図から
電線1線の抵抗 r と
線電流 I を読む(負荷の形は無視)
②
P = 3 × I² × r(電線3本ぶん。Iは2乗)
③
デルタ結線でも箱でも、線電流が同じなら答えも同じ。√3も負荷抵抗もいらない
三相3線式なら「1本ぶんの I²r を3倍」。これで三相3線式の電力損失は解けます。